蒸し暑いが、先日の真夏の暑さよりもましだ。用事があって近所を40分程度歩いたとき、蝉の声が聞こえてきた。7月初めの酷暑の日中には蝉の声がなかったことに気づき、夏はこれからなんだと思った。
夏の最初に羽化するのがニイニイゼミ、今日は盛んに鳴いている。そのうちミンミンゼミやアブラゼミが追いかけるように鳴き始めるのだろう。虫採り網を手に神社や雑木林に出かけて、虫を追って走り回った頃を思い出す。
虫採り網は親の手造り、網でなく手ぬぐいを袋にしたものだ。高いところは竹を接いで、5、6mくらいの高さくらいまで届くようにしていたと思う。捕まえた蝉は家の網戸に留まらせて遊んだ。鳴き声がうるさいと叱られたことも懐かしい。
ニイニイゼミとアブラゼミは、比較的低いところにいて採りやすかった。アブラゼミは帽子や素手で採れることもあった。朝と夕方に「カナカナ」と鳴くヒグラシは、昼間は低木の根近くに隠れていることが多かった。ミンミンゼミは大型で、緑がかった体と透明の羽が美しかった。アブラゼミよりも高いところにいて逃げられることが多く、採れたときのうれしさは格別だった。夏の終わりに鳴くツクツクホウシは、敏感で人が近づくと鳴くのをやめてしまい、しかも高いところにいるのでほとんど捕まえられなかった。
→写真が美しい・詳しい解説 セミの仲間の昆虫図鑑 (ムシミル)
学校のそばの文具店で「昆虫採集セット」を売っていて、夏休みに捕まえた昆虫の標本を作った。クワガタは殺すのはもったいないから、蝉やカナブンが多かった。蝉は、オスとメスを並べて、自由研究の宿題として提出したこともあった。
蝉はオスだけが鳴く。足が出ている胸の下の部分が大きいのがオスで、鳴いているところを横から見ると、腹を動かしているのがわかる。アブラゼミは人が近くにいてもよく鳴いてくれたので、面白かった。積極的なオスが鳴きながらメスに近寄っていくのも見たことがあった。腹の先端の部分で交尾をする。メスの先端は尖っていて、卵を産む管がそこから出る。
木の根元周辺の地面ある無数の穴、直径が2cm程度の穴はアブラゼミの幼虫が出てきた跡だ。夜に羽化するので、夕方近くになってから出てくる幼虫を見つけに行った。穴が小さく開き始めたようなあやしいものに小枝を差し込んでじっと眺める。小枝が動くようなら大当たり、穴を広げて釣り上げる。家に持ち帰って羽化の様子を観察したこともあった。小学生当時の私は下手な絵を描いて、観察記録を学校へ提出した覚えがある。もし、今幼虫が手に入ったらなら、GoProのタイムプラスで様子を録画したい。
セミの種類ごとに抜け殻にも特徴があった。ニイニイゼミは小型で丸く、土がついたような不透明な殻だ。アブラゼミは大型で飴色の半透明の殻、ヒグラシやツクツクホウシは細長かった。抜け殻を多く集める競争をして遊んだが、持ち帰ることはなかった。
セミを採れる場所が少なくなり、熱中症も心配な時代になってしまった。蝉で遊ぶ子供の姿をほとんど見ることができない。残したいものだ。