裕(2) 気分を変える

 仕事や役職に髪型を合わせてきた。自然と保守的で冒険をすることなく、十数年似たような髪型で過ごしてしまった。退職していろいろなことをリセットして、変わろうとする気持ちが自然と高まってきた。んじゃぁ、髪型を変えるのはどうだろう。

 短髪にするのは今でなくてもいい。髪の量があるうちにできる髪型、でなければもったいないように思った。とは言っても、これまで「おしゃれ」方面には関心が低かったから、どんな髪型がいいのか、流行しているのか、ましてや自分の顔に似合う髪型など想像もつかない。

 思春期の頃の流行りは「長髪」だった。

 中学校入学時は、男子は坊主頭にしなければならなかった。小学生時代はいわゆる「坊ちゃん刈り」だったから、バリカンで刈り上げて少し青い頭皮が見える頭になった。ある意味、中学生の容姿になったわけで、少し大人に近づいたことになるが、馴染むまでは変な感じだった。

 中学1年生の時の生徒会が、男子の髪型を坊主でなくても良いように校則を変える活動をしてくれた。校長が退職の年で、置き土産に校則を変えてくれたと聞いている。それからは、生徒手帳に髪型の図が載って、それに違反しなければ髪を伸ばせるようになった。近隣の中学校の中で一番早かったように思う。

 高校には頭髪の細かい規則はなかったから、肩まで髪を伸ばしていた奴もいたが、親の顔色を伺っていた子供だったので、中学とそう変わらない髪型で過ごした。大学時代に1回だけソフトパーマをかけたが、母親に似てしまってがっかりした。夏は短く、冬は伸ばすことだけが基準になっていた。寝癖直しだけして、ほとんどワックスもつけない。朝の髪の毛の様子で、どう分けるかが決まるような感じだ。

 髪の毛が細く、ちょっとクセもある。白髪は40歳過ぎにどんと増えたが、まだ真っ白でないし、量もだいぶあるのは恵まれている。さて、どうしようか。そこは行きつけの理髪店の店長さんのアドバイスが唯一の頼りだ。

 自分の顔に似合う髪型なんてわからないから、提案してもらった。

 ツーブロック
 刈り上げの長さは控えめ。この後さらに髪が伸びてどう雰囲気が変わるのか楽しみではある。気分を変えると言いながら、冒険ができないのも自分らしさだろう。